2026/09/11 08:51

北海道・帯広市拓成町。日高山脈の麓に、小さなチーズ工房「香林農園」があります。
市街地から車を走らせ、畑や山の風景の中へ。小さな看板を見過ごしてしまえば、そのまま通り過ぎてしまうような場所です。

でも、その先には山羊とブラウンスイス牛、そして家族で営む小さな農場があります。
香林農園は1987年、腰山通彦さん夫妻がハーブや野菜を育てる農園としてスタート。
1996年から山羊の飼育とチーズ作りを開始し、通彦さん亡き後は奥さんの真理さんと娘さん夫婦が農場を続けています。
春から秋、山羊たちは放牧地や山林へ出て、牧草だけでなくヨモギやイタドリなどの野草も食べます。
ここで大切にされている言葉が、
「生活が生み出す味」。
人も山羊も牛も自然の中で暮らし、その土地の風土や日々の営みまでがチーズに映し出されていく。

大量に同じものを作るのではなく、そこで暮らす動物から搾れるミルクと向き合いながら、ひとつひとつチーズを作っていく農場です。
そして父・通彦さんが残した、
「この小さな農場が私のキャンバス。百年かけて仕上げてゆく」
という言葉。
世代が変わった今も、そのキャンバスは描き続けられています。

私は全国の北海道物産展などでチーズを販売する中で、ひとつ目標にしていることがあります。
それは、香林農園のように、決して大きくはなくても、自分たちの土地と動物に向き合い、実直にチーズを作り続けている工房の力になること。
まだ小さな力ですが、そんな北海道の作り手と、チーズを楽しみにしてくださる人をつなぐ存在でありたい。
それも、ICHEESEを続けている理由のひとつです。
